• テキストサイズ

Winner【サイバーフォーミュラ・加賀】

第2章 思い出す記憶


それから時期にがやがやとあたりは騒がしくなっていく。どこからともなくエンジン音や、機器のぶつかる音、人々の声があわただしくなってきた。

「…雅?どうかした?」
「アンリ…大丈夫だよ、集中しないとね」
「あのさ、僕、思うんだけど…」
「何?」
「告っちゃったら?」
「…えぇぁ!?」

思いにもよらない程に大きな声が上がった。その声に驚いたピットクルーは全員の視線が雅に向いて来る。脇からはアスラーダクルーが飛んでくる。

「どうかした?!雅ちゃん!」
「いえ…あの…大丈夫!」
「大丈夫って事はない位の声、したわよ?!」
「ほんとに!大丈夫だよ、あすかちゃん…」
「そう?」
「本当に大丈夫か?どこかぶつけたりは?」
「いえ、オーナー…大丈夫です…」

しかしそのわきでアンリがクスクスと笑っている。

「あのねぇ!アンリ!大体私が誰に告白するのよ!」
「え?隣なんだからいいんじゃん?」
「……え、っと…」

くいっと顔を向ける様に指示したのはまさにAOIZIPのガレージだった。

「…あのねぇ…?アンリ…」

気のせいか雅も声は少し小さくなる。

「…気付いてないとか思われてんの、すっごい嫌だなぁ」
「あのね?」
「きっと風見先輩も気づいてると思うけど…」
「う、…そ」
「どうだろうねぇ…」

ふふっと笑うアンリ。

「じゃぁさぁ?今日僕が1位とれたら、告白してみたら?」
「へ?」
「約束ね?」
「勝手に決めないでよ!」
「じゃぁ!」

笑いながらガレージから消えていったアンリ。

「…1位になっても約束は守れないからね?」

そう呟く声は誰に聞かれることも無かった。
/ 292ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp