第2章 思い出す記憶
それから時期にがやがやとあたりは騒がしくなっていく。どこからともなくエンジン音や、機器のぶつかる音、人々の声があわただしくなってきた。
「…雅?どうかした?」
「アンリ…大丈夫だよ、集中しないとね」
「あのさ、僕、思うんだけど…」
「何?」
「告っちゃったら?」
「…えぇぁ!?」
思いにもよらない程に大きな声が上がった。その声に驚いたピットクルーは全員の視線が雅に向いて来る。脇からはアスラーダクルーが飛んでくる。
「どうかした?!雅ちゃん!」
「いえ…あの…大丈夫!」
「大丈夫って事はない位の声、したわよ?!」
「ほんとに!大丈夫だよ、あすかちゃん…」
「そう?」
「本当に大丈夫か?どこかぶつけたりは?」
「いえ、オーナー…大丈夫です…」
しかしそのわきでアンリがクスクスと笑っている。
「あのねぇ!アンリ!大体私が誰に告白するのよ!」
「え?隣なんだからいいんじゃん?」
「……え、っと…」
くいっと顔を向ける様に指示したのはまさにAOIZIPのガレージだった。
「…あのねぇ…?アンリ…」
気のせいか雅も声は少し小さくなる。
「…気付いてないとか思われてんの、すっごい嫌だなぁ」
「あのね?」
「きっと風見先輩も気づいてると思うけど…」
「う、…そ」
「どうだろうねぇ…」
ふふっと笑うアンリ。
「じゃぁさぁ?今日僕が1位とれたら、告白してみたら?」
「へ?」
「約束ね?」
「勝手に決めないでよ!」
「じゃぁ!」
笑いながらガレージから消えていったアンリ。
「…1位になっても約束は守れないからね?」
そう呟く声は誰に聞かれることも無かった。