第9章 苦しくなる心とぶつかる本音
メットを返して雅は加賀に声をかけた。
「…加賀さん」
「ん?」
「あの、帰り、気を付けて帰ってくださいね?」
その問いかけに、加賀は何か返事をすることも無く、ただ右手を軽く上げて返事の代わりとしてバイクを出した。
「…なんだったんだろ…」
そう呟くものの、部屋に戻っていく。やりかけの仕事に向かうものの、当然ながらはかどることも無い。それでも今日中に終わらせておきたい…そう思うのも致し方なかった。
「…明日に回したら…絶対に解らなくなる…」
それは自身の思い、そして感情との戦いにもなっていた。
***
翌日、昨夜遅くまでかかったものの、それでも仕事を終わらせていた雅だった。朝は当然ながら起きれない。
「…ン…」
ふとスマホを見ればミキからメッセージが数件入っていた。
「…何…?」
開いてみれば一気に目が覚める雅。嬉しくもありながら、どうしたらいいのかわからない様にもとれることだった。
『今度、新条の誕生日会、少し早いんだけどやろうかって話になってて!雅も来なよ!』
『あ、誕生会って言ってもほんとに小さいものだし、人もそんなに見知らぬ人!って人はいないし!』
『加賀も来るよ』
その最後の言葉がドキリとした。
「…加賀さんもって……」
本当は飛び跳ねたいくらいに行きたい!と即答したいことだった。それでも雅は少しだけ戸惑っていた。
「…せっかく誘ってくれたし…でも…」
次に会ったらきっと醜態なんて言葉では言い表せない位の姿をさらすに違いない…そう思っていた。
「…ッッ…」
考えていても仕方ない…そう思って雅はミキに電話をかけ出した。