第8章 会いたい気持ち
それでも新条も変わったんだよ、とミキは続けた。
「それでミキさん…余計に好きになったんだ?」
「それもあるけど…ほっとけなかったんだよ」
「母性本能?」
「やめてよ、恥ずかしいから…」
「でも私と加賀さんだと、明らかに加賀さんのが大人だし…」
「…まぁそりゃ、ね」
「それに…今日子さんのが強いし…」
「あの人は別格よ」
「……何か、私にしかできないことがあればいいんだけど…私…逃げてばっかで…それに…」
「雅?」
「何?」
「まずそれ直してみたら?」
そういわれた。しかしどれの事かさっぱりわからなかった雅。
「…その『私なんか』っての…『でも』とか、『それに』とかも。」
「でも…」
「あとそれも!否定的だとどうしても暗くなっちゃうでしょ?」
「そうなんだけど…自信持てないよ…」
「自信なんか後からついて来るって…ね?」
ミキはニコッと笑っていた。
「ん…頑張っては…見る…」
「頑張ってみるじゃなくて、雅は十分頑張ってる!それは私が見ても解るんだよ。だから、あとは自信もって!」
そう背中を押された。
「…ミキさん…」
「そういえば今日加賀、レースのコース見に行くとか言ってたな」
「え?」
「ま、会えるかどうかはわからないけど?」
小さく笑うミキに、雅は『ありがとう…』と伝えて、その足でサーキットに向かっていった。客席に直結する門は当然ながら閉められているだろうと解っていた雅。関係者通路からパスを出して通っていく。
しかし客席を見渡してもやはりいない。
「…当然か…いつまでもいるとはミキさんも言ってなかったし…」
どことなく寂しい気持ちになりかけてスゴウのガレージからモニターに向かい、レースのコースを眺めていた。
「…速いんだよね…みんな…」
ガードの壁にもたれながらも雅はぽつりとつぶやいた。