第32章 新機、登場
逆にきょとん…とした表情で雅はリックを見つめた。
「だって、損得とかないでしょ、城だから一緒に走りたい。一緒に夢みたい。でも城ならきっと夢で終わらせないからその先を一緒に見続けたい…そのために私が、自分たちが出来る事をして城を勝たせる。城も走ることでそれを私たちに返してくれる。すごい事じゃない?」
「…ッッ」
「リックの負けだな」
そのグレイのひと言を聞いてため息を吐く。
「…なるほどな」
「へ?」
「ドライバーとして、男として…両方に惚れこんでるってわけか」
「ほ…!?惚れ…あ、うん…惚れてる…ヘヘ…そうかなぁ…うん、でもそうだよね!リックも、グレイやフィルも城に惚れてるから居るんでしょ?」
「まぁな?」
「一緒じゃん!」
盛り上がってきたころに加賀はレーシングスーツを着崩した状態でメットを持ち戻ってくる。
「なんか楽しそうだな」
「そうでも無いよ?」
「は?」
「え?だって…惚れる惚れない的な話しかしてない…」
「十分じゃない?それって」
「え、そうなの?」
「城、どうやってオトしたんだ?」
「あ、違う!」
「クスクス…」
「城!とりあえずどうする?」
グレイが声をかけ、加賀はそのままメットを雅に預けてグレイの元に向かっていく。
「…違うってどういう事?」
「私が…押して押して…」
「は?マジ?」
「マジ」
「…ふぅん、いい事教えてやろうか?」
「へ?」
「すっげぇ美人に言い寄られてもなびかなかったんだぜ?あいつ」
「…モテるもん…城…」
「でも、押したからってだけでオチる男じゃねぇから」
「押し切った感は強いけど…」
「クス…まぁ、あいつの走り見るんだろ?」
そうリックが言えばぱぁっと顔が明るくなる雅だった。