第23章 過ぎていく疾走
そうして緊張の第11戦目、途中まではハヤト、加賀共に接戦を持していた。そんな中だ…
「…ッッ!!」
加賀が苦戦していた『ミラージュターン』を成功させてハヤトを追い超したのだ。
「…まずいな…」
そう修がつぶやいた次の瞬間だ。
ドゴーーーン!!!!
ハヤトを抜いた瞬間に加賀のマシンが思い切りクラッシュをする。
「加賀君!!!」
AOIのピットは一瞬にして空気が凍る。しかし、空気が凍ったのはAOIのピットだけではなかった。
「…ッッ」
「雅ちゃん…ッッ」
あすかが雅を支える。今にも倒れそうに立ち尽くしていた。
担架で運び出された加賀。指定病院へと運ばれていく。
「…ッ…な、んで…」
「雅ちゃん…!」
「真坂、アンリはまだ走ってる」
「…は、い…」
その修のひと言で足を踏ん張り、まっすぐにモニターを見つめる。
「…大丈夫よ、絶対に」
「ん…」
あすかのひと言もあり、支えがなくても立っていた雅だった。AOIのガレージもだんだんと慌ただしくもなっていく。しかし今日子はまだその場に残ったままだった。
最終コーナーも立ち上がり、1位はハヤトでチェッカーを受ける。ピットに戻ればあすかに問いかけた。
「…加賀さんは?」
「解らないわ…」
ちらりと雅の方を見るものの、まだ何とか保ってアンリのモニターに見入っていた。
「…大丈夫かな…」
「心配よね…」
「…あぁ…」
しかしレースは止まらないままに最後の疾走までしっかりと見届ける形となっていった。