第23章 過ぎていく疾走
アンリもピットイン…結果は6位入賞だった。ピットに戻った瞬間だ。
「…何してんだよ!」
「…え?」
「なんでここにいるんだって!」
「…なんでって…アンリ迎え『勘弁してよ…』…ッッアンリ?」
アンリは雅の目の前に立つなり胸ぐらをつかんだ。
「アンリ!!」
初めてのことに、さすがの修やハヤトも動き出す。二人の間に入ってもアンリの行動はなかなか収まらない。
「アンリ!落ち着けって!!」
「放してください!風見先輩!」
「無理だろ!どう考えても!」
「だってそうでしょ?!」
シン…っと静まり返っているスゴウのピット。その騒ぎにどうしたと言わんばかりに他のチームも集まってくる。そんな事はお構いなしに、アンリは雅に話し出す。
「なんでここにいるんだって!」
「なんでって…」
「なんで…加賀がクラッシュしたの知ってるんだろ!なんで追いかけないんだよ!」
「アンリ、落ち着け」
「落ち着いてますよ!」
周りの人などお構いなしのアンリ。目の前にいる雅の事しか見えていなかった。
「…そんなに不安で仕方ないって顔して…今にもぶっ倒れそうな顔で…!!」
「…ッッ」
「心配なら行ってくれていいって…!」
「そうはいかないでしょ」
「なんでだよ!」
「私、は…スゴウのクルーだもん。アンリの走りを、レースを最後を見ないといけない。」
「そんなのどうでもいいだろ!」
「…ッッ!!」
その言葉を聞いた瞬間に雅の平手がアンリの頬を捉えた。
「…どうでもいいとか…そんな気持ちならコースに出るな!」
「…ッッ」
「皆…みんなどんな思いでコースに出ているか…!ピットの皆がどんな思いでマシンを、ドライバーを見てるか!」
「…真坂」
「…すみません…ッッ頭冷やしてきます…」
修にぺこりと頭を下げて雅はその場を後にした。