第8章 ケンゼン
「はぁぁぁぁぁぁぁ…こ、こんなのか、かっちゃんに知られたら…」
『はい。動かないの』
顔を真っ赤にした出久の入院着を脱がすだけで約10分。勝己が出久のことを揶揄ってクソナードって呼ぶことが前からあったけど、これは、ナードでしかない。
「あ、あの…も、もうあとは自分で拭け、」
『まだ背中拭いただけでしょ』
「ま、前側は自分で拭けるから!ありがとう!!!」
耳まで、いや首まで真っ赤にした出久にタオルを奪われた。私から奪ったタオルで自身の体の前面を隠している。いや、乙女かアンタは。
『出久』
「な、何…?」
恐る恐るとこちらを振り返る出久。捨て猫のように震えながら目を潤ませている。目が合ったので優しくにっこりと笑いかけながら私の自慢の爪を見せてあげた。
なぜかはわからないけど出久が観念してタオルを私によこしてきたので受け取って再び出久の体を拭き始めた。
『別にいかがわしいことしてるわけじゃないんだから』
「だ、だからだよっ!そ、そいうんじゃないから、余計に、き、緊張するに決まってるでしょ…」
『じゃあいかがわしいことならいいの?』
真っ赤な顔で反抗してくる出久がなんだか可愛くて、つい、揶揄いたくなってしまった私は、出久を後ろへ押し倒してみた。
「へぇえええ!?あ、あの、だ、だめだよ、ぼ、僕らそんな、ここ、病院だし、何より、かっちゃんが、っ」
包帯で覆われているところを刺激しないようにそっと押し倒したつもりだったが、出久は顔を真っ赤にしながらも抵抗はしない。むしろ真っ赤な顔を手で覆っている。いやだから乙女かて。
「と、渡橋クンッ!?な、何をしているんだい!?こ、ここは病院であり、君たちは高校生ッ!不純異性行為は辞めたまえ!!!」
「そうだぞ。芹奈。病院で、ましてや俺らが見ている前ではやるなよ」
『ごめんごめん。つい、面白くて』
出久の上から退き自分で体を拭くようにタオルを手渡すと、真っ赤になった出久は再びタオルを抱え込み布団の中へ潜り込んでしまった。
『……ごめん。つい』
あまりピュアな同級生を揶揄うもんじゃないな、と1つ学んだ。