第6章 マタタビ
「そ、そうなの…?辛いこと思い出させちゃって、ごめん」
『あぁいや…もう8年も前のことだから、大丈夫だよ』
私のお母さんは、猫の個性を持ったお母さんはストーカーたちに拉致されて、何か、人体実験のようなことをされたらしい。
遺体で見つかった時、全身に火傷の跡があったって。
死因は頭部損傷。お母さんは、奴らの隙を見つけて建物から飛び降りた。
最初は犯人グループに突き落とされたのでは、と言われたが、お母さんは猫だ。高いところから落ちたって着地ができる。
それでも、しなかったということは、そういうことだ。
現場にいた犯人グループは1人残らず捕まったが、裏の指示役がいるそうで未だ事件の解決には至っていない。
「おい」
『ん?』
しんみりとしてしまった空気の中、突然勝己が来た。来て、何か手を突き出している。
「その気持ちわリィクソの手紙どこだ」
『え、えーと、これ』
ボンッ
猫コレクターと名乗る奴の手紙を手渡すと、一瞬にして爆ぜて灰となった。
『えっ…』
「クソのクソみてぇな手紙受け取ってんじゃねぇクソネコ!」
『いや、押し付けられたし…』
「今度クソがクソみてぇな手紙渡してきたらとっ捕まえて俺ンとこしょっぴいてこい!俺が殺す!」
いつものようにクソクソ言っている勝己だったけど、嬉しかった。
お母さんが亡くなって泣いていた時も、隣にはいつも勝己がいてくれたっけ。
でも、勝己に守られてばかりじゃいられない。
「渡橋さん、愛されてますわねっ」
『えへへ、まぁ腐れ縁だからねぇ』
なんとなく、冷たく澱んでいた空気が元に戻った。勝己は自分の席でまた行儀悪く座っている。
『ねぇ爆豪くん、残りの手紙も燃やしちゃってよ!なんか、中身気持ち悪いし』
「うっせぇ俺を便利屋扱いすんじゃねぇ!テメェで片せ!猫!」
「爆豪いいのー?渡橋、この手紙持ってたら返事書いちゃうかもよー?ほら、これ返信用の住所と宛先書いてあるし」
「クソガァ!」
耳郎ちゃんの煽りによって、机の上に散乱していた中身の薄気味悪い手紙たちは一つ残らず灰と化した。