第5章 ウンドウ
「どこで道草食ってやがった」
『ん?出久を家まで送ってきた』
家が見えた。勝己の家の前を通ると勝己がいつも通りの目つきでこちらを睨んでくる。番犬としては優秀か。
そういえば体育祭中に軽く口喧嘩したな。気まずいか?と一瞬思ったが、まぁ勝己のことだ。深く考える必要はない、梅雨ちゃんも言ってたし。勝己もあの後暴れまくってたし、忘れただろう。
「あ?クソデクを?」
『怪我してたでしょ。あれじゃ色々大変かなって。どうせ方向一緒だし』
「…気に入らねぇ」
『…別に勝己に気に入っていただかなくても』
そういえば、と出久ママからもらったお菓子の袋をガサゴソと漁る。さっきしまったばかりだから上の方に…緑の半透明の筒を取り出した。
お邪魔しまーす、と爆豪宅の敷地に入り勝己に近づくとまた睨まれる。だから番犬かて。
『手出して』
「あ?」
『ラムネ。勝己糖分足りてないでしょ。いつもイライラカリカリして』
一向に手を出さないので無理やり手を引っ張り、ラムネを3粒出す。
「んなもんいらねぇよ」
『せっかくあげたんだから食べなさいよ』
「…クソが」
急に立ち上がってラムネを口に放り投げたと思ったらグンと腰を引っ張られる。おや?と呑気に思っていたのも束の間、勝己との距離が0に等しくなる。
『んんっ…』
流石に家の前で、!?と驚き胸板を押してみるも、もちろんびくともしない。
強引に唇をこじ開けられ、熱い舌が入り込んでくる。
『はぁっ…んぅ……』
溶け始めたラムネが口の中に入る。いつもとは違う味がする。
屋外で、家の前でこんなに卑猥な音を鳴らしていることに羞恥心が掻き立てられる。
3分ほどこうしていただろうか。口の中のラムネが完全に溶け、やっと唇が離れた。勝己の顔が少し赤らんでいるように見えるのは気のせいか、夕日のせいか。
「んじゃな」
今までしてきたキスよりも、今まで食べてきたラムネよりも、甘かった。
勝己が家に入って言ったのを見て、私も家へ帰った。