第5章 ウンドウ
「良い試合だった」
『うん。常闇くんも。ありがとう』
青山くんに難なく勝利した私は第二回戦で常闇くんと対峙。難敵・黒影と空中戦で検討するも、私の滞空時間の限度が短くよろけた隙を狙って場外へ吹っ飛ばされた。
「すまない。鋭い爪での攻撃を恐れ少々手荒になってしまった。怪我はないか」
『あぁちょっと擦っちゃったけど、大丈夫。また、強くなるからさ。その時は手合わせよろしくね』
「もちろんだ」
そう言って私たちは握手を交わした。中央ではミッドナイト先生が「んんー!青い!」と悶えている。
四方にお辞儀をして会場を後にした。正直、勝ちたかった。でも、これで終わりじゃない。訓練あるのみ、と胸に刻んで溢れかけた涙を脱ぐった。
軽い擦り傷だけど念のためリカバリーガールに見てもらおう。えーっと、どこだっけな。
『あれ…こっちだっけ…』
道に迷いながらリカバリーガールの出張保健室を探している。あの角を右に曲がった所、だったはず!
「あ?」
『ギィャアアアア!!』
角を曲がるとそこにはすこぶる機嫌の悪そうな勝己が。いや、彼に機嫌の良い時なんて滅多にないけどさ。
『あ、あれ、勝己、切島くんと…』
「終わったわ!俺の圧勝だったわ!」
『え、私そんな迷ってたの…?』
「どこ探してんだ」
『リカバリーガールのとこ…ちょっと肘擦っちゃったから念のため消毒してもらおうと…』
「………」
『え、か、勝己』
先ほど擦って赤くなっている肘を見せると黙って肘を握られた。え、ナニコレ。握りつぶされる?
「テメェ何負けてやがる」
『……っ』
「俺とヤる前に他の男に負けてんじゃねぇ」
『私だってっ…負けたく…なかったよ、そりゃ』
「お前にヒーローは向いてねぇ」
『…は?』
流石に、こんなことを言われる覚えはない。たとえ勝己でも。
『なんでアンタにそんなこと言われなきゃなんないの』
「テメェは俺に守られてりゃ良いんだよ!一生俺のソバから離れんじゃねぇ!俺の見てねぇとこで死ぬ気かテメェ!」
『…っなんでっ私だって…!』
言い返したかったけど、言葉が続かなかった。そんな私を置いて勝己はさっさとどこかへ行ってしまった。