第4章 セナカ
『…ということがあって』
「凶暴化ねぇ…今の所あんたの周りにいたっていう敵の中にそういう個性のヤツは報告されてないね」
『はぁ…』
事が一通り落ち着き、場所は保健室。向かいにはリカバリーガール。
「凶暴化か…渡橋さんの個性は空駆ける猫。もしかしたら何か隠れた個性因子が今になって発現し、それのコントロールが上手くいっていないとかか…?いや、だとすればかっちゃんの言うことを大人しく聞いたのはどういう原理なんだ?帰巣本能?いや、そもそも個性のコントロールが上手くいかないからといって…ブツブツブツ」
「渡橋少女、記憶を失う前の最後の記憶はあるかい?」
奥のベッドにはそれぞれボロボロな出久としぼんだオールマイトがいた。
『えー…黒い霧に包まれて尾白くんと火災エリアに飛ばされたんです。で、それぞれ別方向の敵たちと戦って…』
「えっ渡橋さん火災エリアに!?よりにもよって火が苦手な渡橋さんが…」
「渡橋少女、君は炎が苦手なのか?」
『あ、はい。小さい頃から、特に理由はないんですけど、生理的に無理、っていうか…』
「もしかして、記憶を失う前たくさんの炎に囲まれていなかったか?」」
オールマイトに聞かれ懸命に頭を捻ると炎を口から出す敵に体を押さえつけられていたことを思い出した。思い出すだけで全身にブルッと鳥肌がたった。
『そうです、目の前で、炎をバァッと…それが、関係してるんですか?』
「聞いたことがあるんだ、昔、中国で猫の個性を持った女性が、強い恐怖心を抱き凶暴化したって話をね」
『え…それ…』
「だが、その女性はその後暴れすぎて命を落としたって話だ」
『命を…?』
「…とにかく、よくわからないうちは炎には気をつけることさね。今は体力も落ちてるからね。よく休みなさいね」
リカバリーガールに背中を押され、保健室を後にした。
不安はあるがプロヒーローになるには卒業までの3年間で、確実にこの話を消化しなければならないと、固く心に決めた。