第2章 カラダ
「僕の個性は人から授かったものなんだ!」
盗み聞きするつもりなんてなかった。
私も、確かに出久の個性について不思議に思っていた。
幼稚園で出久が無個性だって馬鹿にされていたのを今でも覚えている。
そしてあの時、出久に何も声をかけてやれなかった自分の不甲斐なさも鮮明に覚えている。勝己や、周りの子の話に合わせるだけで、自分の意思などなかったあの時の私の青さも。
みんなに馬鹿にされたから個性が遅れて出てきたのを言い出せなかったのかなって思ってた。
人から、授かったものだったなんて…
「こっからだ!俺はこっからだ!俺はここで1番になってやる!」
初めて見る、あんなに感情的になった勝己。悔し涙を流す勝己。
悔しそう、といえば雄英に入学が決まった時もすごく悔しそうな顔をしてたな。私は入試まで勝己に志望校黙ってたし。
勝己は、いつでも1番になりたがって、1番になっていた。1番先頭に立って強くて、いつでも私を守ってくれる。
でも、いつまでも守られてばかりじゃいけない。弱虫な私が話した時、怒られたっけな。お前は俺に守られていれば良いって。
そんな勝己が好きだった。強気で、前だけを向いていて。
…好きだった…?いや、そんなはずはない。
確かに小さい頃は勝己に守られてばっかりだったけど、中学あたりからやっと自我が芽生えた私は、勝己からいじめられる出久を庇っていた。…正直中学に入ったあたりから出久への態度は酷かった。今日のヒーロー基礎学の訓練の時だって…
でも、出久を庇いながらも勝己のことを嫌いになれないでいたのはなぜ、?
昨日、勝己に抱かれて嫌悪感が微塵もなかったのはなぜ?
この気持ちは、何…?