第12章 ヘヤ
『ん…』
目を覚ますと、体には薄い布が一枚かかっているだけ。
部屋は変わりなく、窓もない。今が何時かなんてわからなかった。
体を起こすと腰がズキズキと痛む。
どれだけの時間、あの男に抱かれていたんだろう。ぼーっとする頭で今から逃げようかと考えるが、体が気怠くて何かできる気もしない。
『勝己…』
男に囚われる前、出久はかっちゃんが狙いだと言っていた。
果たして勝己はん無事なのか。正直他人の心配をしている余裕などないのだが、
逃げるとしたらあの扉か。
果たして鍵はかかっているんだろうか。まぁかかってるだろうな。私のことを拘束もせず鍵の空いた部屋に置いておくわけがない。
とりあえず服を着よう。マタタビの効果で体が熱っぽい。異常なほどの濃度のマタタビを嗅がされたおかげで、あの男と何度も性行為をしたにも関わらず効果が消えていない。
お腹が空いたし喉も乾いた。
早く、帰りたい。
歩くことはできないので個性を使って片足で浮遊する。体力がないせいか少しの距離の移動でも息が切れる。
何とか床に落ちていたTシャツやハーフパンツを手に取り身につける。
確か下着はあの男によって燃やされた。
匂いのするベッドにいると気分が悪いので古びたソファに腰掛けて着替える。
足はまだ痛む。歩くことすらできない。
もう少し体力が戻ってから脱出を試みるか。
いや、そんな悠長なことをしている時間があるのか。いつあの男が帰ってくるか分からない。
外に出られさえすれば誰か、助けてくれるのではないか。
服を身に纏った私は何とかドアの前に立ち、ドアノブに手をかけた。