第12章 ヘヤ
『っ……?』
目を開けると無骨なコンクリートの天井。どこか血生臭い空気。
芹奈は必死に頭を巡らせ、気を失う直前に何があったのか思いした。
『拉致られたのか…』
あいこちが痛む体を起こすと、パイプでできた古びたベッドが軋んだこの部屋にはどうやらこのベッドと傷だらけの革でできたソファだけだった。
『い゛っ』
鋭い痛みを感じ足元へ目線を向けると足首が真っ青に変色していた。記憶の中ではあらぬ方向へ折られたのだが、今はまっすぐ伸びている。動かせはしないが。
「起きたか」
扉が軋みながら開き、男が入ってきた。芹奈を連れ去ったあのつぎはぎの男である。
『っ…ここはどこ』
「秘密基地、と言ったところか。安心しろ。俺以外にここへ上がってくるやつはいねぇ。みんな用があんのは下の階だからな」
『安心できるわけないでしょ…』
ベッドへ向かってくる男に気味の悪さを覚え後退りをしようとするも、片足が完全にイってしまっている。まともに動けないまま、狭いベッドの上で身構える。
「何でここに連れてこられたかはわかるよな」
『…どこで炎猫獣の話を』
「ガキの頃、親父に散々言われたよ。仲間にすりゃとんでもねぇ戦力になる。
炎の個性持った家系ならおおよそは知ってんじゃねぇのか」
『私はあんたなんかに屈しない!』
「そう言ってられんのも今のうちだぞ。早く服従しちまった方が楽だろ。なぁ?」
『っ離せ!』
男に頬を鷲掴みにされ上を向かされる。涙目になりかけながらもこちらを睨みつけてくる芹奈の姿が男の加虐心を煽った。
「俺のもんになるんだな。渡橋芹奈」
芹奈は何とか体を引き離そうと反抗するも、全身怪我だらけで満身創痍である。そもそもの体格差もあり呆気なくベッドへ押し倒された。