第10章 ミズギ
「なぁ爆豪」
「あぁ!?んだアホ面」
17時になり相澤先生により終了したプール時間。更衣室で不機嫌そうに体を拭く爆豪に、神妙な面持ちの2人が声をかけた。
「お前、渡橋と付き合ってんのか」
「あ?」
男子更衣室の空気が固まった。
「ど、どうなんだよ。お、お前ら幼馴染なんだろ?」
「……どうでも良いだろうが。テメェらには関係ねぇだろ」
「関係ねぇとか寂しいこというなよ!お前だろ?渡橋の鎖骨のあたりにめっちゃキスマークつけてんの!」
「っやっぱりあの傷跡爆豪がヤったのか!?」
どうやら切島も気になっていたらしい。正直、芹奈の近くにいた人間は全員気になるほど目立っていた。思春期の彼らには格好の餌である。
「っタリめぇだろうが。アイツのカラダは俺のもんだ」
爆豪の強気な一言に峰田、上鳴、切島は圧倒される。なかなかにキザなセリフである。
さっと着替えを済ませた爆豪は荷物を取り不機嫌なまま扉へ向かった。
が、
「おい、待て」
「あ?んだよ半分野郎」
爆豪の手を轟が掴んだ。2人の視線はガッチリとぶつかり火の粉を散らしている。
「芹奈のカラダはお前のもんじゃねぇ。芹奈のもんだ」
その場にいた誰もが派手な戦闘を覚悟したが、爆豪は不機嫌さを更に加速させ部屋を出て行った。