第6章 『 誓い 』
昼。
何事もなかったかのように、本丸には昼餉の匂いが満ちていた。
笑い声。
器の触れ合う音。
私は、少しだけ――拍子抜けしていた。
(……さっきの異変が、嘘みたい)
昼食を終え、審神者部屋へ戻ろうと、回廊を歩いていた、その時。
――ひゅ、と。
空気が、鳴った。
足を止める。
胸の奥が、きゅ、と締まる。
(……来る)
次の瞬間。
本丸の奥――
折れた刀たちが眠る部屋から、一斉に、気配が立ち上がった。
「……っ」
息を呑む。
それは、痛みでも、怒りでもない。
“呼吸”。
眠っていたものが、同時に、息をしたような感覚。
回廊の柱が、かすかに軋む。
「今の……」
近くにいた刀剣男士たちが、一斉に振り向く。
「折れた刀の部屋だ……!」
誰かの声。
私は、走り出そうとして――止められた。
「待て」
低く、落ち着いた声。
三日月宗近。
回廊の中央に立ち、こちらを見ている。
「……行くな」
「でも……!」
「今は」
一歩、近づく。
「“目覚めた”だけだ」
その言葉に、胸の鼓動が、少し落ち着く。
「同時反応……」
三日月は、目を細める。
「主を“中心”として、刀たちが、互いを認識し始めている」
「……そんなこと、あるんですか」
「滅多に、ない」
はっきりと。
「だが」
一拍置く。
「起きた」
沈黙。
私は、拳を握った。
「……怖いです」
正直に、言った。
三日月は、ふっと微笑む。
「それでよい」と。