第4章 『 主として 』
「この事実を」
鶴丸が、静かに言う。
「伏せたまま、本丸を続けるのは」
自然と声は小さくなっていた。
「……俺は、嫌だ」
振り返り、私を見る。
「主が、決めろ」
試す瞳。
「伝えたら、この本丸は荒れる」
「でも」
「黙ってたら、折れた奴らは二度死ぬ」
胸が、痛いほど締めつけられる。
私は、ゆっくりと立ち上がった。
「……伝えます」
声は、小さい。
でも、揺れなかった。
「鶯丸の名前も」
鶴丸の目が、わずかに揺れる。
「ただし」
続ける。
「誰かを責めるためじゃありません」
「前任を糾弾するためでもない」
一歩、前へ。
「この本丸が、
どこからやり直すのか――
それを、全員で知るためです」
沈黙。
やがて。
「……はは」
鶴丸が、小さく笑った。
「やっぱり、驚かせてくれる主だ」
その声は、どこか救われていた。
「じゃあ」
鶴丸は、奥の間を一度だけ振り返る。
「鶯丸」
低く、確かに呼ぶ。
「無駄じゃなかったって、ちゃんと見せてやろうぜ」
私は、拳を握りしめた。
この本丸の再生は――
痛みの上にしか、成り立たない。
でも。
(……だからこそ)
私は、主でいる。