第11章 愛される呪い
冷たいのに、熱を帯びていた。
不意に視界が霞み、震えが止まらない。
「やめて……っ……私……っ、私は……ッ。」
呪「怖がる顔、泣きそうな声……最高だよ。でも、もっと綺麗に崩れるところが見たい。君の“術師”としての仮面が、全部剥がれて──素の女として堕ちるまで。」
ぐっ、と肩を押さえつけられた瞬間、みみは膝から崩れ落ちた。
もう、力が入らない。
体が熱く呼吸が乱れ、恥ずかしさと興奮と理解できない何かが混ざっていた。
「なんで……こんな、ことで……。」
呪「それが、私の術式。触れた相手に“悦び”と“苦しみ”を同時に与える。逃げ場はない。君は……壊れるまで気づかないよ。」
唇が頬に触れる。
痺れるような電流が走り、全身に波紋が広がる。
その瞬間、みみは自分の中で何かが決定的に変わったことを感じた。
快楽でも苦痛でもない、もっと原始的で不可避な“欲”の芽が心の奥で芽吹いていた。
──このままじゃ、本当に……
助けなんて来ない。
彼女を救うのは外からの手ではなく、内からの抗いしかない。
しかし、その抗う意思が果たしてどこまで残っているのか──。
呪霊の囁きは、まだ続いていた。
耳元に、まるで恋人のように。
呪「君の声、もっと聞かせてよ──ねえ、みみ。逃げようとするその姿、たまらなくそそられる。追い詰めたくなる。壊したくなる。」
声が脳内に直接滑り込む。
意思とは無関係に、背筋を撫でられたような感覚が走る。
くちびるが、勝手に震えた。
「やめ……ッ。」
呪「その“やめて”が、どこまで本気かな。君、術師のくせに……すごく無防備だ。無様に暴れてるのに、足の間が……温かいね。」
「言うなぁっ……!」
その声に羞恥が混ざる。
だが呪霊は構わず指先で空中をすっとなぞるだけで、彼女の太ももを撫でたような感触を生ませた。
「やだ……っ、やだ、のに……。」