第8章 抗えない夜
湯気の立ち込める浴室。
柔らかな照明が壁に揺れ、浴槽の湯面がきらめく。
みみは肩まで湯に浸かり、軽く息を吐いた。
「……はぁ、気持ち良い……。」
まるで、さっきまでの淫らな行為が嘘のように静かな時間が流れている。
甚爾は隣で胡坐をかきタオルを肩にかけたまま、湯から出した腕を縁にかけていた。
彼女の隣にいるとはいえ、視線はあえて湯の表面に落としている。
甚「風呂くらいは……ちゃんと休ませてやるか。」
自分に言い聞かせるように、呟いた声はみみには届いていない。
彼女はその隣で、ほぅっと息を漏らしながら髪を掬い上げ、うなじをさらけ出した。
それはまるで無防備な挑発――
否、本人にそのつもりは一切ないのだろう。
だが、その白いうなじに滴る水、濡れた髪をまとめる仕草、
柔らかな胸元が湯からわずかに、のぞくたび甚爾の理性が削られていくのが自分でもわかった。
甚「……おい。オマエ、無自覚でやってんなら……そっちのがタチ悪ぃぞ。」
「……え? なにが?」
無邪気な声に、彼は思わず笑みを浮かべる。
その笑みの奥に、じわりと滲む獣の本能があった。
甚「なぁ、みみ。……風呂くらいは休ませてやろうって思ってたんだけどな。」
「……?」
次の瞬間、彼の大きな手が湯の中でみみの脚を強く引いた。
そのまま彼女の身体は浴槽の中で、脚を開かされる体勢になる。
「っきゃ……! 甚爾、な、なにっ――!」
甚「もう遅ぇよ。」
その声は低く、抑えの効いた獣の唸り声のようだった。
湯気の中で彼の瞳が鋭く光り、みみを上から見下ろしていた。
甚「さっきから無防備に煽って……俺が我慢してるの、気づかなかったか?」
手は彼女の太腿を割るように内側へと滑り、濡れた肉の奥へと指を沈めていく。
湯の熱とは違う、くちゅりとした音が混じった。
「んっ……や……ッ、ここ、お風呂……っ!」
甚「そうだよ。風呂ん中だ。声、響くぞ?」
彼は濡れた指を抜き、唇に咥えて舐める。