第4章 再会
まるで誰の前だろうと構わないというような支配の意志が、指先に残っている。
甚「オマエか。相変わらず薄気味悪いな、夏油。」
傑「私は礼儀を守る方だからね。少なくとも、任務中に女の身体を貪るようなことはしない。」
甚「ほぉ……けど、コイツの顔見たら、我慢できねぇだろ?」
甚爾がわざとらしくみみの首筋に唇を近づけると、傑の瞳が鋭く光った。
その表情の変化を、みみは見逃さなかった。
「やめて、傑……違うの。私は……っ。」
口に出した途端、自分の声が震えていることに気づいた。
否定するつもりで口を開いたのに、言い訳にしか聞こえない。
それが一層、彼らの緊張感を煽る。
傑「違う? どこが?」
傑が1歩近づくたびに、甚爾はまるで挑発するようにみみの身体を自分の影に庇い込む。
みみの腰にある手が、まるで所有を主張するように強く締め付けた。
甚「コイツは、俺の女って顔してただろ。オマエにもそう見えたんじゃねぇか?」
傑「ほう……そう思いたいなら、そう思えば良い。だが、彼女の意思を無視するのは嫌いだ。」
静かな怒りが、傑の声に滲んでいた。
空気が一瞬で張り詰める。
そして――
傑がみみの手首を取った。
対する甚爾の手が、みみの腰を引き寄せる。
まるで、みみという存在を賭けた綱引きだった。
体が揺れた瞬間、どちらにも引き裂かれそうな痛みが走る。
けれど胸の奥が熱いのは、恐怖だけのせいじゃない。