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転生したら呪術廻戦の世界でした

第17章 彼女が消えた


――ブレーキ音。

近づくエンジンの唸り。

「……っ!」

ハッとした瞬間、背後から誰かの腕が勢いよく伸び彼女の身体を後ろへ引き戻した。

その直後、目の前を車が駆け抜けていく。

風圧で髪が舞い、買い物袋が地面に落ちる。

卵がひとつ転がり、割れた。

呆然としたみみは、まだ心臓が早鐘を打つ中、背後の人物を振り返る。

甚「……大丈夫か。」

その低く、少しかすれた声に――

心が、凍りついたように止まった。

彼女の目の前に立っていたのは

――間違いなく、伏黒甚爾だった。

乱れた黒髪。

無骨な顔立ち。

鋭い眼差し。

数年前と変わらないけれど、どこか“今の世界の人間”として違和感のない服装で。

だが、それよりも何よりも。

その瞳が、確かにみみを見ていた。

「……甚……爾?」

名前を口にした瞬間、喉の奥が震える。

彼は片手で落ちた袋を拾い上げながら、口元だけで小さく笑った。

甚「ああ。……久しぶりだな。」

その声に、言葉にならない感情が込み上げてきた。

夢じゃなかった。

記憶の中だけの人じゃなかった。

彼は今、目の前にいて、自分を――

助けてくれた。

「……どうして……ここに……。」

甚「オマエが呼んだからだよ。ずっと。」

甚爾の言葉は淡々としているのに、心をまるごと貫いた。

甚「……俺は向こうで死んだ。確かにな。」

「……!」

甚「でも……終わりじゃなかった。オマエが、ずっと俺を想ってくれてたから……声が届いた。」

彼の指が、そっとみみの頬に触れる。

温かくて、懐かしくて何よりも愛しかった。
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