第11章 春日山城
ー安土城
顕如による予想外の襲撃で織田軍も死傷者が出た。
「申し訳ございません。何者かが情報を操作していました。俺の責任です」
「良い、秀吉、三成。織田軍内にネズミがいる。それがわかればあとは炙り出すまでだ」
「お前達の軍があそこで来てくれなきゃ、俺たち結構やばかったからな」
「本当に申し訳ございません。あと一歩気づきのが遅ければ取り返しのつかない事になっていました」
「‥それで、信長様。琴葉と美桜の行方はわかったんですか」
家康に聞かれ信長は今朝方届いた謙信からの文を出す。
「あやつらは上杉・武田に居るそうだ。安土で過ごしている様に春日山でも過ごしているそうだ。‥美桜の方は顕如の毒矢を受け、数日寝込んでいたそうだ」
「美桜が?!」
「単騎で琴葉を追いかけた時でしょう。あの小娘、悪運が強い」
顕如の毒矢は強力な物で、織田軍内で命を落とした兵が何人もいた。
美桜が回復しているのは奇跡と言っても過言ではない。
「まさか、あの軍神がそれだけのために文を寄越したはずはないですよね」
「ああ、ここからが本題だ」
信長は少し間を置き、本題に入る。
「上杉・武田軍が一時的な休戦と協定を提案して来た」
「あの戦好きで有名な上杉謙信がですか?」
三成が驚き、再度問う。
「美桜が提案したそうだ。くくっ、あの龍と虎を手玉に取るとは、大した女だ」
「どうなさいますか、御館様」
「この案を受け入れよう。久方ぶりにあやつらの顔が見たくなった。場所は安土と春日山の中間にあるこの城だそうだ。ふっ、美桜め。俺がこの案を拒まないと思い日時と場所まで先に指定して来たぞ」
信長が半ば関心して言う。
「相手の先を読むなんて光秀に似て来たなあ?」
政宗がニヤリと笑い、光秀の方を見る。
「これでも師弟関係だからな。似るのも不思議ではない」
「光秀に似るなんてダメだ!美桜が帰って来たら俺が面倒見る!」
「やれやれ、これだから過保護な兄は困る」
「誰が過保護な兄だ!」
「琴葉様にもお会いしたいですね!」
「三成、それ深い意味はないんだろうな?」
「?はい、ただお会いしたいだけですが‥」
広間が賑やかになった所で信長が話す。
「謙信に返事を送る。皆、支度をしておけ」
軍議が解散し、蘭丸だけは唯一晴れない顔のままだった。