第2章 本能寺

「信長様！お怪我は？！」

「秀吉か、大事ない。賊は取り逃したがな」

「そうでしたか‥」

「(今度は豊臣秀吉？！次から次に名だたる武将達が来る‥)」

「豊臣秀吉？！」

案の定、素直な琴葉はとうとう思ったことが口に出てしまった。相手の様子を見てみると

「何だお前達。俺を知っているのか？」

‥‥突然知らない人に名前呼ばれたら驚くよね。すごく睨まれているし。

「その女たちのことは気にするな。美桜、琴葉といって、俺の命の恩人だ」

「お前達が信長様を助けただと‥？見たところ華奢なただの小娘だが‥豪胆な女達だな」

「(妖しい笑顔、、品定めされているみたい)

「－光秀、どうしてお前がここにいる」

「お前こそどうした。京にいると聞いていたが？」

「信長様暗殺の報を耳にして飛んできた。だが、お前まで京に向かった報は、聞いていない」

「何が言いたい？」

「後ろ暗いところがないと信長様に誓えるか？」

二人はお互いを見据え、急に空気が張り詰める。

「(この人が明智光秀‥。豊臣秀吉は明智光秀が犯人か疑っているのね‥)」

「後ろ暗いところがない人間なんて、この乱世にいるのか？」

「はぐらかすな。いい加減、腹の底さらせ」

怒りを露わに瞳を光らせ、豊臣秀吉が刀の柄に手をかける。

「万が一、信長様を手にかけようとしてたのがお前なら‥容赦しない」

「(ダメだ、見てられない‥！)」

「その人じゃないと思います」

「「は？」」

「(しまった。なぜ口出ししてしまったの！もう遅いか、ここまできたら言った方が良い)」

「さっき、犯人と思わしき人物に蹴りを入れましたが、服装が違っていました。だから、その人ではないと思います。」

「(顔は見えなかったけど、明智光秀は別の人だった)」

「‥蹴りだと？」

「‥口を出すな。美桜と琴葉、とか言ったな。お前達の件は後で追及する。何の目論見で信長様に近づいたか確かめる」

「なぜそうなるんですか？私達は巻き込まれただけです」

「やめろ、秀吉。光秀がここへ来た思惑はどうであれ俺は無事だ」

「っ‥！信長様、失礼しました。」

秀吉さんは、刀の柄から即座に手を離した。