第11章 春日山城
謙信様が医者を手配してもらい、近くの村に立ち寄った。いつの間にか、上杉の領地に入っていたらしい。
「危険な状態です。が、早めに手を打てたので数日すれば目を覚ますでしょう」
今の状態で美桜を移動させるのは不可能だと判断し、医者が良いと言うまで村に滞在することになった。流石にこの大人数を泊めるのは無理だったので、謙信様、幸村、兵達は先に越後に戻った。
「佐助くん、美桜の容体はどう?」
私が湯浴みをさせてもらっている間、佐助くんが美桜の看病をしてくれていた。
「熱が高い。毒だけでなく、傷を負ったことも高熱の原因の一つだと医者も言っていた」
「‥そうなんだ、」
「‥琴葉さん、逃げるなら今だ」
「え?」
佐助くんの言ったことが理解できなかった。
「このまま春日山に行けば間違いなく、牢に入れられる。逃げる手配も整えている。美桜さんの容体が落ち着いたら送り届ける」
「(佐助くんは優しいな。そんなことしたら佐助くん自身も立場が危うくなるのに‥)」
優しさが胸に染みながらも首を横に振る。
「このまま春日山に行くよ。謙信様に『私はどうなっても構わないから美桜を助けて』って言ったし、ちゃんと謙信様とも話し合いたい。素性を偽ってた事も謝りたい」
「琴葉さん‥君はやっぱり強いね。わかった。でもなにかあったら俺もサポートする」
「ふふっ、ありがとう!」
それから三日程経って漸く容体が安定し、移動しても大丈夫と医者からお墨付きを貰ったので村を出た。
「まさか信玄様が日曜大工が趣味なんて知りませんでした」
「よく家具とか作ってるよ」
「凄いですね!」
信玄様は滞在の僅か三日間で村の人から頂いた壊れた荷車を直した。そこに美桜を寝かせて馬に繋いで走らせている。
「‥謙信が暴れてきたら言ってくれ。あいつは愛が少し重いところがあるからな」
「あ、愛‥ですか、?」
何だかよくわからないが、信玄様もサポートしてくれるそうだ。
「(春日山に着いたら、そこからが私の戦いだ‥)」
そして春日山城に到着した。