第9章 敵陣
(美桜目線)
信長様の予想では謙信は琴葉を戦地の真ん中で返還した後、正面から仕掛けてくるだろうとのこと。一応、幾つかのパターンは用意していたが、予想は的中した。
戦場で琴葉が上杉謙信の馬に乗っていることに驚いたが、無事な姿を確認でき安心した。
琴葉が馬を降りようとした時、どこかから矢が無差別に降ってきた。
私は隣にいた光秀さんに守ってもらったが、怪我をしている人も少なからずいる。
「(一体誰が‥)」
予想外の襲撃に両軍困惑していると、東の方から、黒い集団がこちらに向かってくるのが分かった。
誰かが姿を確認したのか全員に聞こえるように伝達する。
「黒装束を纏った集団が接近!先頭にいるのは‥‥顕如です!」
報を聞いて、困惑が広がる
「顕如だと?秀吉達が追ってるんじゃなかったのか?」
政宗が今、誰もが思っていることを言った。信長様は状況判断をし、素早く皆に命令する。
「坊主め、ここで来たか‥家康の軍と美桜は琴葉の元へ、それ以外は全員、家康の軍を援護しつつ、応戦しろ」
しかし、顕如達は私たちが戦闘体制に入る前に攻撃してきた。一瞬でその場は地獄絵図と化した。
「琴葉!!」
「美桜!!謙信様、ここまでありがとうございました。仲間の馬に乗りますから、降ろして下さい」
琴葉が言い、謙信が手を離そうとした時、顕如が私達の目の前にきた。
「顕如?!」
「良いのか、上杉謙信。その女は信長の寵姫だ。今後、戦に使えるかもしれんぞ」
「?!‥‥お前も、裏切ったのか‥。送り届けるのはなしだ」
「そ、そんな‥」
顕如が琴葉のことを喋ったせいで謙信は琴葉をこちらに返さず、撤退の命を出した。琴葉達がどんどん遠ざかっていく。
「美桜!矢がまた降ってくる!逃げるよ!!」
家康さんに逃げるよう言われた。でも私は応じず、馬を全速力で走らせ、謙信達を追った。
「待て!美桜!あんたじゃ、くっ!」
家康さんの制止を無視し、馬でひたすらに駆ける。矢が幾つか降ってきて、腕や肩を掠めたがそれでも走らせた。
「謙信様!信玄様!何者かがこちらに迫っています!」
「何?」
「単騎で追いかけるなんて勇ましい奴だ」
全員が後ろを振り返り私の姿を見た。驚く人、速度を上げろと急かす人、そんなに私が怖い?矢を受け、血が出てる姿で追いかけてきたらそりゃ怖いか。