第8章 開戦
戦は引き分けとなり、明日に持ち越しとなった。
みんなが帰ってくる中、琴葉の姿が見えず、天幕を探し回っていると政宗から明日の作戦について話し合いをするから来いと言われ、信長様の天幕へ向かった。
「光秀、政宗、家康、報告を」
信長様に促され、光秀さんから順に今日の戦況を話した。
「後衛に武田軍が少数で攻めてきましたが、分が悪いと思ったのか退避していきました」
「こっちは真田幸村の軍と張り合わせたぜ。まあ結果は引き分けになりましたが、こっちが退避する時あんまり深追いはしてこなかったな」
「救護の方は奇襲をかけられる事なく今日は終わりましたよ。怪我人もまだ少ない方でしたね」
三人の報告を受け、信長様は一つの結論を出した。
「今日は下調べということか。おもしろい。やはり一筋縄ではいかんか」
その後、明日の作戦会議が始まり、終わりかけた時ずっと気になっていることを信長様に質問した。
「信長様。琴葉の姿が見えません。どこにいるか教えて下さい」
私が聞くことをわかっていたかのように信長様は直ぐに答えた。
「‥琴葉は落馬し、謙信に連れ去られた。恐らく今は上杉・武田の陣営にいるだろう」
「「?!」」
予想を遥かに超えることを言ってきて思考が追いつかなかった。
敵に連れ去られた、?何故追わなかったの?そんな疑問が湧き出る。
「どうして最初に言わなかったんですか」
「美桜、気持ちはわかるけど落ち着いて」
家康さんに落ち着けと言われても直ぐには無理だ。努めて冷静にしていても色々な感情が出てきそうになる。
「こうなるだろうと思って最後にしたんだ。最初に話せば取り乱し、作戦を練れなくなると思った。それに琴葉の件が最優先だ。‥謙信の目的はわからん、が、あの様子から見るに興味本位で攫っただけだろう」
ああ、この人はすごいなぁ。他人の性格までも理解し、話す順序もしっかり立ててる。
改めて、織田信長という人を知った。
「取り乱して申し訳ありませんでした」
「貴様も取り乱すことがあるんだな」
下げていた頭を上げ、信長様を見ると優しい眼差しを向けていた。
「(信長様、こんな顔もするんだ)」
しかし、次の瞬きでいつもの眼に戻った。そして私達は夜遅くまで琴葉の奪還作戦を練っていた。