第8章 開戦
(琴葉目線)
「きゃあ!」
信長様の家臣の馬に乗っていた私は敵と戦闘中、落馬してしまった。家臣の方は、敵に集中しているせいで落馬したことに気づいていない。
「(ど、どうしよう‥!)」
戦場で武器も持たず、身一つで投げ出され、腰が抜けてしまった。
琴葉は信長と目が合い、震える声で名を呼んだ。
「の、信長、様」
信長様がこちらに向かってきて私は手を伸ばすが、それより先に謙信が私を抱き上げ、馬上に乗せた。
「なっ?!」
「女なんぞを連れてきたか。‥哀れだな。こちらに来い」
「え、あ、ちょっと!話して!信長様!」
後ろを向いて信長様を見て助けを求めたが。謙信の馬が加速し、敵兵達が信長様の行く手を阻んだためそれ以上追うことはできなかった。
「あ、あの、これからどこへ、?」
謙信の馬に乗せられ、私は居ても立っても居られず話しかけた。
「陣へ一旦戻る。体勢が崩れてかけていたからな。信長め、よくもやってくれる」
そう言いながらも謙信は嬉しそうな顔をしていた。
「女、何故戦場にいる」
唐突に聞かれ、どう答えるべきか悩んだ。馬鹿正直に『織田家縁の姫』などといって、人質にされみんなの足枷になりたくなかった。
「‥怪我人の看護で、きました」
「(嘘をついている訳ではから大丈夫、なはず‥!)」
せめてもの対抗で謙信の眼をまっすぐ見つめた。左右で異なる色の眼を持つ人だと初めて知った。
「‥そうか。ならば明日、陣へ返そう」
「(ん?じゃあなんで私、連れ去られた?)」
謙信の動機が全く掴めない。
聞こうと思い口を開きかけたところで謙信が先に喋った。
「少し、速度を上げる。喋ると舌を噛むぞ」
舌は噛みたくなかったので、黙って従う事にした。また後で聞けばいっかなんて我ながらなんて呑気な考えなんだろうと思っているうちに、上杉・武田軍の陣営に到着した。