第7章 戦の前
私と光秀さんが広間に入ると全員が座っていて重い空気が流れていた。
信長様が上座から広間を見渡し軍議を始めた。
「全員、揃ったな。秀吉、報告しろ」
「はっ。先程斥候より知らせが入りました。上杉・武田の軍勢が国境付近まで迫っているとのこと。如何されますか、信長様」
秀吉さんから報告を聞き、信長様は即答した。
「急ぎ、国境に向かい龍と虎を討つ。顕如もこれを機に攻めてくるやもしれん。光秀、政宗、家康は俺と共に来い。秀吉、三成は引き続き顕如の動向を探れ。美桜、琴葉、貴様らも戦に来い。これまでの成果、見せてもらうぞ」
「「御意」」
「「はい」」
「(とうとう戦が始まってしまった‥怖いけど、訓練してきたから大丈夫。精神面でも落ち着いている。琴葉も緊張しているけど、震えてない‥家康さんのおかげね)」
それから細かな作戦を手短に話し合い、各々戦支度へ向かった。
「美桜!はい、これ。頼まれてた羽織」
「ありがとう。綺麗な色。それにとって上手」
「男装している時にも使えるように色は控えめにしてみたんだ」
琴葉の仕立ててくれた羽織は赤紫色で上から下にかけて色が濃くなっているグラデーションだ。
「戦に着る用でもあるんだよね、?だから無事に帰ってきますようにってたくさんお願いしながら作ったんだ!‥‥絶対、帰ってきてよ?」
「もちろん。約束する。琴葉も後方支援とはいえ危険だからね、気をつけて。‥その羽織、もしかして家康さんの?」
琴葉が手に持っている風呂敷から辛子色の布が見えた。
「そ、そう!願掛けで作って‥これから渡すの」
「きっと喜んでくれるよ。間違いないわ」
「そうだといいなあ。じゃあ渡してくるね!」
手を振りながら去って行った琴葉を見てこの恋が実ってほしい、幸せになって
ほしい、そう思うほど今の琴葉は恋をしている女の子の顔だった。