第6章 訓練開始
「(なんとか初日は乗り切れた。このままこの調子でいけば大丈夫そうだ‥)」
乱れる呼吸を整え、体術稽古までまだ時間があるので気分転換に城下を散策することにした。
「(‥あれは、琴葉と佐助くん?)」
「あ、美桜!ちょうど良いところに!」
私に気づいた琴葉は手を振って来た。
「やあ、美桜さん。会えて良かった。琴葉さんにも話したけど、俺たちはしばらく安土を離れることになった」
「そうなの?急だね。まさか‥」
私がなぜ安土を離れるかわかり、佐助くんは頷いた。
「君達には話すが俺の仕えていのは敵将のところだ。でも、これだけは忘れないで。最終的に味方をするのは君達2人だ」
「‥佐助くん、ありがとう。危険を承知で言ってくれて」
「いや、良いんだ。これは俺の責‥」
「琴葉と佐助と‥その人は?」
何かを言いかけている最中で誰かが話しかけてきた。
とても綺麗な顔立ちでこの世の人とは思えない雰囲気がある男だった。立ち姿だけでも上品なのがわかる。
「‥義元さん。この人が美桜さんです。美桜さん、この人は義元散策といって俺たちと一緒に来た人だ」
一緒に来た人という言葉で敵側の人間だという意味も含まれていることに気づいた美桜は、本能寺の夜に森にいた人物だと思い出した。
「初めまして。美桜です」
「あの夜にいたもう一人の子だね。琴葉と佐助から聞いてるよ」
「(なんともまあ喋り方も気品ある‥‥織田軍の報告は本当だったわ、死んでいたはずの三人が生きていた)」
義元の人柄を見つつ、あることが疑問に浮かんだ
「義元さんと琴葉はいつ知り合ったんですか?今日が初対面という感じではなさそうでしたし」
「あー、えーと、唐物屋で出会って、私がその審美眼に惹かれて色々教えてもらってたんだ。話すの忘れてたよ‥」
なるほど、師弟関係みたいな感じかと思い納得していると
「義元ー!!!!」
幸村が叫びながら走ってきた。
「片付け手伝うって言って俺が持ち場を離れている隙に!来い!戻るぞ、佐助もだ!‥じゃあな、美桜、琴葉。また会おうぜ」
律儀に私達に挨拶をして、義元さんを引っ張って幸村は戻って行った。
「帰り支度をしていたんだ。俺も行かないと。二人共、死なないように‥!」
佐助くんも二人の後を追うように走って行った。
乱世に来て一ヶ月が過ぎようとしていた。