第5章 安土城城内
あれから数日。琴葉の体調も回復し、みんな(主に信長様)の計らいで私達はそれぞれ仕事に就いた。
「今日は、これまで!各自、任に戻りまた明日、稽古に来るように」
「「ありがとうございました!!」」
体術稽古は最初の方はみんなこんなやつが師範で大丈夫なのか、という感じで中には喧嘩を吹っ掛けてくる人もいた。『売られた喧嘩は買う』主義ではないが、しばらくの付き合いになるので実力はあるということを証明するために相手をした。実力があることを認めてくれて、今では時々雑談を交わす仲となった。
「お疲れ様」
稽古場を出て、廊下を歩いていると琴葉が声を掛けてくれた。
「琴葉!針子仕事の方は順調?」
「うん、とっても良い場所だよ。最初は針子頭さんの試験が通るまで緊張したけど、今はみんな仲良しだよ!裁縫やっといて良かったー」
「ふふっ。今度着物の仕立てでもお願いしようかな」
「是非!とびっきり可愛いの作るから!」
腕を曲げて筋肉を見せるポーズをしている姿を見てお互い可笑しくなってまた笑い合った。
「そうだ。琴葉に快気祝いで渡そうと思ってた物があるの」
「え、そんな物まで用意してくれてたの?!わあ、綺麗な髪飾り!」
「白い椿の花の髪飾り。琴葉に似合うと思って、頭に着けてあげるよ」
髪飾りを着けた琴葉はとっても可愛くて、これにして正解だと改めて思った。
「私も美桜に何かプレゼントしたいなあ。仕立てた着物とセットで今度あげるね!二倍返ししちゃお」
「ありがとう。楽しみにしてる」
買った時、佐助君と千に会った時の事を思い出し、琴葉に話した。
「佐助君からの忠告は守った方が良さそう‥でもみんなカッコいいからなー」
「琴葉?カッコいいのはわかるけど、帰る時に辛くなるだけよ」
「そうだよね‥‥てか、お姫様助けた、ってほんと凄いよ。しかも私にも会いたいって、優し過ぎー」
「千はお姫様っぽくないけど、所々品格が現れてる。本人に会う時、呼び捨て、敬語なしだからね。怒られるよ」
「ふふっ、気さくな人だね。早く会ってみたいなー」
「きっと気が合うよ」
暫く雑談をし、琴葉が城下に買い物に行くというので一旦別れることにした。