第11章 ずっと前から
微笑み合いながらも、どこか落ち着かない。
2人きりになるのは、意識してしまう距離感があるから。
そんな空気の中、彼女が腕を上げて棚に手を伸ばした瞬間だった。
悠「……それ、なに?」
不意に、悠仁の声が低く響いた。
「……え?」
振り返ると、彼の視線はまっすぐに彼女の首元を見ていた。
無防備に空いたブラウスの襟元――
そこには昨夜、甚爾に刻まれた紅いキスマークが、くっきりと残っていた。
「あ……っ、これは――。」
悠「誰に、つけられたの?」
いつもの柔らかい彼ではなかった。
目の奥に熱と怒りが揺らめいていて、彼女の喉が音を立てて鳴る。
「違うの……悠仁、それは……。」
悠「……男の痕、隠さないで平気なんだ。」
悠仁の手が彼女の腕を掴む。
ぎゅっと、今までにない強さだった。
「……そんなの、隠す時間もなかっただけで……。」
悠「じゃあ、俺にもつけさせてよ。」
その言葉と同時に、彼は彼女を壁際へと追い詰めた。
「ゆ、悠仁っ……っ。」
抵抗しようとする前に、唇が塞がれる。
いつも優しく笑っていたその唇が今は強く執念深く、舌を絡めてきた。
甘い感触などない。
荒々しく息を奪うように貪られて、頭が真っ白になる。
悠「……誰に、抱かれたの?」
耳元で低く囁かれたその声に、背筋がぞくりと震える。
「言えない……関係ないでしょ……?」
悠「関係あるよ。俺、ずっと……我慢してたんだから。」
彼の手がブラウスの前を乱暴に、はだけさせる。
ボタンがはじけ飛び、ブラウスの下の肌が露わになる。
「やっ、だめ、ここ……会社で、誰か来たら……!」
悠「じゃあ早くイかせて。そしたら、終わるから。」