第3章 鬼に稀血
実弥は顔を上げて仁美を見た。
お互いに顔を紅潮させて、荒い息を吐きながらお互いを見ていた。
……仁美の目は赤いままだった。
栗色の淡い目が美しいと思った。
だけど血の様に真紅の色の目が実弥を捉えると。
その目に全ての感情が奪われる気分になった。
仁美は実弥の顔を見て、涙が込み上げてきた。
実弥に抱き付いて彼の肩に顔を埋めた。
………温かい……。
人間の体温はこんなにも温かいのだと初めて知った。
仁美が知っているのは無機質の様な肉の感触。
血は通っているだろうが、その体から体温は感じない。
ただ快楽を貪られるだけの重ね合う体。
こんなにも互いの体温を感じて安心する感覚は初めてだった。
「…連れて行って…お願い…。私も連れて行って…。」
仁美の涙声が実弥の耳元で聞こえた。
その声を聞いた時に、情欲に支配された体がゆっくりと凪いでくるのが分かった。
実弥は仁美の体を木から離すと、仁美を抱き上げて自分の胸の中に収めた。
「…ああ…何処までも連れて行ってやる。」