第3章 鬼に稀血
「お前が日が沈んでも無防備で寝るなんて珍しいなぁ。」
実弥はニヤッと笑って仁美に言った。
「……………。」
実弥に揶揄われて顔を真っ赤にしている仁美に、実弥は目を細めた。
自分におぶられて、安心だったとでも言うのだろうか。
どんなに心落ち着かせる相手でも、夜寝る自体仁美にはあり得ないのに。
「……実弥様と一緒だったので、気が緩んだ様です…。」
仁美は寝て崩れた髪を解きながら顔を俯かせて言った。
……嘘だろ。
俺と居て、お前が心休まる訳がねェ。
実弥は分かっていたが、仁美には何も言わずジッと見ているだけだった。
実際仁美が自分と同じ部屋で居る事に抵抗が無いのは、結界も貼っていない宿に1人で居る勇気が無いからだろう。
思い出の恐怖より、現実の夜の闇の方が怖いのだろう。
「……風呂入りに行くぞ。」
「……入りたくありません。」
風呂場で実弥と離れる。
考えるだけで恐ろしくて仁美は顔を真っ青にした。