第2章 輝石の額当て
……あの時に感じた感情をなんと呼べばいいだろうか。
天元は2年前事を思い出し、今も自分の腕の中にいる仁美をチラッと見た。
天元と目が合うと仁美は困った様に笑った。
最近はめっきりあんな風に縋ってくる事は無い。
むしろ彼から歩み寄らなければ、仁美から夜に来る事もないだろう。
それがもどかしくもあり。
この距離がちょうどいいとも思った。
仁美はきっと今夜抱こうとしても、天元を拒否しないだろう。
だけど情欲は見せてもそこに恋慕の気持ちは無い。
このまま仁美が、夜に怯えなくなるならその方が良い。
紛らわす為の乞うだけの行為なら無い方が良いのだから。
「………………。」
ジッと見てくる天元に仁美は困惑した顔をする。
いつ見ても綺麗な顔にこうして見られると、恥ずかしくて目を逸らしたくなった。
「……泣かせたい…。」
「ええ…?」
そんな天元の一言に仁美は更に困惑する。
泣いて縋ってくる姿が1番愛おしかったと言う事は。
悔しいから黙っている事にした。
ー輝石の額当て 完ー