第1章 半々羽織
快楽に溺れるこの体が悍ましい。
仁美は確かにそう言った。
だけど義勇と口付けをし、手を握り合って重ねた夜は。
悍ましい体ですら全て許される様な。
そんな一時だった。
「…はぁ…はぁ…はぁ……。」
自分の白濁した体液が仁美の体を汚し、白い肌を薄紅色に染めている仁美を見下ろしながら。
この恋心はもう引き返せないとハッキリと感じた。
いつかこの目が情欲の色では無く、自分と同じ恋慕の色に染まればいいと。
仁美の顔に触れ、口付けを繰り返しながら義勇は願った。
朝になり、耀哉の屋敷まで寝ている仁美をおぶって歩いた。
耀哉の屋敷に仁美を引き渡すと、屋敷の使用人が仁美を義勇から引き取った。
少しだけ目が覚めて仁美は義勇を見た。
ボヤけた視界で見る義勇の顔に、仁美は少しだけ胸を痛めてまた目を閉じた。
仁美はまた、耀哉から何処かの藤屋敷を任されるのだろう。
そして自分は仁美の居る藤屋敷を探すのだろうと。
義勇はそう思った。
ー半々羽織 完ー