第8章 4枚の婚姻状
その時にグラッと黒い世界が歪んだ。
意識が引き離されていく。
「仁美。」
童磨は離れた仁美の体に手を伸ばした。
2人の体がどんどん離れていく。
「お前は絶対に俺たちの場所に戻ってくる。」
遠くかる意識の中で、最後の童磨の言葉が頭に響いた。
ー
ーー
ーーー
「仁美!!!」
「!!!」
目が覚めた時に杏寿郎の顔が目に入った。
仁美はしばらく困惑した様に杏寿郎を見ていたが、彼の手が自分の肩を掴んでいるのを見て、起こされたのだと気が付いた。
窓の外を見ると夜明けだった。
(……うたた寝をしていたのか……。)
仁美はゆっくり体を起こすと顔を俯かせた。
もう夜だけではない。
昼間の寝ている時でさえも鬼から逃れられない。
無惨と繋がった事が仁美を追い詰める。
「…凄くうなされていたから起こさせてもらった…。」
杏寿郎は申し訳なさそうにそう言った。
うなされていた……。
そうだ…。
あの胸の締め付けは恐怖でなければならない。
そうでなければいけない。