第8章 4枚の婚姻状
「嬉しいね。こうして仁美と繋がる事が出来た。」
真っ暗な闇の中、童磨の声が聞こえた。
その声を聞いた時に仁美は全身にゾッと悪寒が走った。
「震えているが…どうした?」
急に耳元で声が聞こえたと同時に、あの腕が仁美の体を覆った。
後ろから抱き締められてすぐにあの頃の気持ちに引き戻される様だった。
鬼しか知らずに、科から目を逸らして、何も考えずにただ縋っていた毎日。
「俺たちから離れた日々はどうだった?怖がりな仁美をこうして抱き締めて落ち着かせる奴は居たか?」
声はいつもの様に優しかった。
しかし仁美は彼の声色から苛立ちを帯びている事に気が付いた。
無惨と繋がって、こうして童磨とも繋がるとは思っていなかった。
「………匂いが変わったか?」
しばらく仁美の感触を堪能した時に童磨は顔を顰めた。
それは童磨にとって気分を害す匂いだった。
そう…藤の花……。
仁美から藤の花の香りがした。