第7章 鬼の宴
童磨の無遠慮に距離を縮めてくる距離感に嫌悪が出た。
しかし猗窩座は童磨の腕の中で見つけた栗色の瞳を見て、反射的に出そうになった手を止めた。
見上げるその瞳に誰かを思い浮かべる。
結局誰も思い出せないのに、その瞳を見ては湧き上がる『守る』と言う言葉に囚われる様だった。
猗窩座は結局童磨に従った。
仁美とはまぐわなくても顔を出し、外に出たいと言うなら夜なら散歩にも付き合った。
最初こそ仁美は猗窩座を警戒していたが、元々女を食わないと聞かされていた事もあり、心を開くのは童磨より早かった。
ただ猗窩座が口癖の様に守ると言うと仁美は困惑した。
何から守られているのか分からないからだ。
ここは鬼は居ても仁美を食う鬼は居ない。
猗窩座のその言葉が自分に向けられているモノでは無いと言う事はすぐ分かった。
当の本人がその事に気が付いていない事の方が違和感があった。
仁美はまだ鬼の心情を測りきれていなかった。
大切にされている様で、最も残酷な事を平気でする。
それでも生きていく為にはこの環境に慣れるしか無かった。