第7章 鬼の宴
「…………………。」
「ん?」
ボーッと宙を見ている仁美がボソッと何か言った。
童磨は仁美の顔を覗き込みながら目が合わない仁美の栗色の瞳を見ていた。
「……月が見たい……。」
ここはずっと薄暗くて今が夜なのか昼なのかも分からない。
何より…あの廊下を歩いてまた人だった者の肉片を見る事はしたくなかった。
ここが鬼の住処だとしたなら。
もう1秒もここに居たくなかった。
「仁美は外の方が好きか……。」
少し悩んで童磨は仁美の言葉を受け入れた。
「いいよ。仁美が好きなら何処へでも。」
童磨は仁美を抱き締めた。
仁美は壊れた人形の様に抱き上げられた。
それから童磨から与えられた屋敷には窓があった。
日中でも陽の光が入るその部屋は夜にならなければ鬼は来なかった。
仁美は日中に陽の光が当たらない部屋で暮らしていた母親を思い出した。
どうやら鬼は陽の光が苦手な様だ。
仁美の体も長い年月夜型の生活になれていて、昼間の明るさは苦手だった。