第6章 虹色の目の無神論者
童磨が傷を舐める度に足が震えて瞑っている目から涙が出た。
「ああ痛いのか。ごめんね。もう少しだけだから。」
優しい声とは裏腹に、その舌は傷口を再び開かせ出てくる血を啜り続けた。
仁美は痛みに体を震わせるが起きる事は無かった。
起きるほどの体力が戻っていない。
じゅるっじゅるっと血を啜る音が部屋に響いた。
そしてそれは『少し』の時間では無く、日が上り沈むまでずっと続いていた。
ー
ーー
ーーー
……痛い……。
下半身が火が付いた様に痛みが続いている。
「……旦那様……。」
痛みで意識が戻ると、1番最初に発したのは無惨を呼ぶ言葉だった。
「ああ、やっと気が付いた?」
「!!!!!」
聞こえてきた声は聞いた事の無い声だった。
同時に下半身の痛みがより強く体に響いた。
それよりも目に入った光景に、仁美は声を出す事も出来なかった。
自分の足の間に顔を埋めながら、白橡色の髪の鬼が恍悦な顔で仁美と目を合わせていた。
その虹色の目に驚くより、仁美は今のこの状況を理解する方が難しかった。