第5章 傲岸不遜の鬼
「この女の傷を癒せ。」
無惨はそう言って気を失ったままの仁美を童磨に渡した。
「おや…食用では無いと……。」
童磨は純白のドレスを纏っている仁美を見た。
そして、出血している場所が下半身に集中しているのを見て、大体の事は察した。
(…愛玩用だとは…これはまた希少な事だ…。)
なら、何故無惨が自分に仁美を渡したのかも納得出来た。
童磨は上限の鬼を一通り思い描くが、女を預けるなら自分が1番妥当だと自負した。
「お任せ下さい。どの様な仕上がりをご希望ですか?」
童磨はニカっと笑って、再び無惨を見上げた。
「……鬼を受け入れても傷付かない様に。」
そう目を細めて言った無惨に童磨は驚いた。
他の鬼にも見せなかった気遣いを、たかが人間にしているのだ。
(……人間?)
仁美から香る匂いと、微弱な『なにか』を感じ取って、童磨はもう一度仁美を見た。
その瞬間に無惨はもう姿を消していた。
童磨は仁美を抱きながら心が躍った。
「これは面白い。」
こんなに気分が高揚したのは久しぶりだった。
ー傲岸不遜の鬼 完ー