第4章 赫き炎刀
そんな2人が刹那の時間を過ごしているなら、実弥は2人の前に出る事は出来なかった。
「義勇様…。私は怪我をしていない義勇様と会いたいです。」
仁美は笑いながらそう言った。
「…そうだな…。怪我をしていると腕を上げて仁美の体に触れるのも辛い。」
「………ふふ…。」
義勇は仁美から抱き締めて欲しいと言っている。
それが義勇の表情で分かるから、仁美は思わず声を出して笑った。
「……義勇様…。」
仁美は義勇の背中にそっと手を添えると、彼の胸の中に顔を埋めた。
そんな2人の姿は。
間違いなく思い合っている男女に見えた。
仁美の手が背中に触れれば義勇は顔を赤らめて。
そんな義勇を目を細めて仁美は笑顔で見上げる。
義勇が仁美の顔に近付いた時。
実弥は思わず目を逸らした。
思えば。
仁美が実弥が側に居る時に離れたのは初めてだった。
自分の意思で実弥から離れて義勇の怪我を庇いながら、彼に寄り添いながら歩いて行った。