第1章 はじまり
マキアはもともとは、シンディ辺境男爵の次女として産まれ
魔力が高く、召喚獣の使役の才能を認められ
ミへーラフィ侯爵の養女となったのは12歳の時だった。
冬の雪降る日にミへーラフィ侯爵が治める領地にて
侯爵様に初めてお会いした
『よろしくお願い致します。侯爵さま』
『娘となったんだ。お養父様(おとうさま)と呼びなさい。』
『はい。』
『そして、シンディ辺境男爵一家のことは忘れなさい。』
『え?……そんな……』
『そのまま元家族のことを想っていて、その能力の妨げになるのはこちらとしては困るのだ。それとも……別の手段の方が良いか』
そう言いながら手をあげようとした侯爵様ではなくお養父様に
『いえ!!』
食い入るよう止めて
『今この時をもって、シンディ辺境男爵家の事は忘れます。』
そう言いながら、頭を下げながらドレスを持つ両手の力が入る。
(とうさま、かあさま、あねさま、産まれたばかりの弟のルルヤ……申し訳ありません。)
それが12歳の冬にあったこと
それからヒューニンザ帝国魔法塔に入る17歳までは侯爵令嬢らしくいるのがマキアの役割だった。
現在から遡ること1週間前
ミへーラフィ侯爵家の首都邸宅にて養父に呼ばれた
太い灰色の葉巻に火をつけながら、養父の執務室にて…ソファーに座り紅茶を飲むマキアと向かい合うように座る養父こと
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ズイキ・ミへーラフィ侯爵
白髪混じりのオールバック銀色短髪に細めの眼鏡をかけているつり目の黒色の瞳、ヒューニンザ帝国の大臣として皇族に仕えている。
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「久しいな。マキア」
「はい……お養父様」
紅茶の入るティーカップを置き、軽く一礼するマキア
養父の時に会う、堅苦しいドレスにもアップヘアにも窮屈なのに
養父の吸う葉巻の甘ったるい匂いに心の中では不快極まりない。
そんな事を感じさせないくらいマキアは微笑みを養父に向けた
そんなマキアの反応にフン!っと言いながら葉巻を再度吸って、紫煙を吐き出す養父ことズイキ