第1章 ver.寿嶺二 7/13
それは、オタクとしては、欠かせないイベント....推しの誕生日。
そんな日に、突然現れた彼。
日付けが変わった瞬間、いきなり部屋が光ったかと思うと、誰かがそこに居た。
茶色の髪に、くりっとした目。
肩まである髪は、緩いカールをしていて、白い帽子を被っている。
対して私は、緑の服に、緑に光らせたペンライトを持ち、ぬいぐるみを中心に、ケーキや彼のイラストを並べ、俗に言う祭壇の前で、写真を撮ろうとしていた所だ。
驚いたような瞳と、目が合った。
「え、えーっと?わぁ、僕ちんがいっぱい???」
「れれれれれれいじいいいいいい!?!?!?」
「はーい、寿嶺二デッス!あ、誕生日のお祝い?嬉しー!サンキューベリベリマッチョッチョッ!!」
と、おチャラけながらも、ファンへの気遣いは忘れない、その昭和テイストな彼は、間違いなく、私が推している寿嶺二、その人だ。
な、なんでこんな所に嶺二が...!?と焦る私だが、彼は彼で、驚いてはいるようだが、手元にある手紙らしき物を読んで、ふむ。と冷静に見える。
「なるほど...シャイニーさんのせいか。じゃあ、僕は、別世界ってやつに飛ばされたってことなのかな?」
「そ、そんなご都合主義な...!」
「あはは~。それで、どうやら一日経ったら元の世界に帰れるみたいなんだけど、ちょっとお願いがあって」
「な、ななななんでしょう???」
「僕ちん、この部屋から出られないみたいなんだよね。だから、ちょっと一日、お邪魔してても良いかな?」
それは1日中、推しと居られると?
「・・・無理ぃ」
「え、無理か、困ったなぁ、どうしよう...って!ちょ、ちょっと君!大丈夫!?」
あぁ、推しの困った顔も国宝モノです。
焦った顔の彼が、倒れそうな私に近づいてきたところで、視界がブラックアウトした。