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【第二章】ヨコハマ事変篇 〜ひとしずくの願い〜

第7章 欠けゆく月と君の隣で







朝、窓の隙間から柔らかな光が差し込む。
鳥の声と海風の音が遠くで混じる、ゆっくりとした朝。
香織が目を覚ますと、太宰がすぐ隣で腕を伸ばして自分を抱き寄せていた。

「……太宰君」

小さく呼ぶと、まだ眠そうに目を開ける。

「……ん、おはよう」

低く掠れた声に、香織はくすぐったそうに笑った。

「ちゃんと帰ってなかったんだね」

「帰るわけないだろう」

太宰はそう言って、半分寝ぼけたまま香織の髪を頬に当てた。

「……このまま寝かせて」

「……だめ」

「だめか……」

諦めたように笑って、太宰は香織の額に唇を落とすと、少しだけ首を傾けて真剣な瞳を向けた。

「今日も一緒にいよう」

香織は思わず笑って、小さく『うん』と返事をする。
朝の光が二人の髪に柔らかく降り注ぐ。
重なる指先が、きゅっと握られた。
『幸せはいつか終わる』と怯えていた昨日までが、まるで嘘みたいに遠い。
香織は太宰の胸元にそっと額を預けて、甘く、穏やかな呼吸を繋いだ。




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