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【第二章】ヨコハマ事変篇 〜ひとしずくの願い〜

第2章 青の時代 〜忘れられないあの日の思い出 𝓟𝓪𝓻𝓽1〜







森の奥で冷えきった体のまま、どうにか足を引きずって美鈴は家に戻った。
屋敷の門を潜ったときには、もう夜気は肌に張りついて、指先まで冷たくなっていた。
玄関の灯りの下で待っていた両親が、美鈴を見つけるなり駆け寄った。
弥生は肩を抱きしめ、玲夜は苦い顔で問いかける。

「どこに行っていたの、美鈴!心配したのよ」

弥生の声が小さく震えていて、美鈴は胸が詰まった。

「ちょっと、外の空気を……ごめんなさい」

顔を上げないまま小さく笑ってみせた。
心の奥では何一つ笑えないのに、唇だけが勝手に形を作る。
玲夜が眉をひそめ、何か言いかけたが、弥生が小さく首を振った。

「寒かったわよね、着替えて休みなさい」

美鈴は小さく頷いて、そのまま両親をすり抜けるようにして階段を上った。
背後でまだ心配そうに呼ぶ声があったけれど、それ以上は何も言わせなかった。




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