第6章 時を超えた想い、私はあなたの何番目?
「‥‥迷子の子供の親を探していたら俺に会ったと……」
中也が呆れたように額を押さえ、ちらりと子供を見やると、優は香織の手をしっかり握り返していた。
「優!!」
遠くから女性の声が響いた。
香織ははっとして顔を上げ、太宰と一緒に視線を向ける。
モールの人波の向こうから駆け寄ってきたのは、明らかに母親と父親らしき人だった。
優は小さな手を振りほどいて、『ママ!パパ!』と叫びながら飛び出す。
香織はホッとしたように胸に手を当て、少し背中を丸めて大きく息を吐いた。
「良かった……」
両親に何度も頭を下げられ、太宰は涼しい顔で片手をひらひらと振る。
香織は優の頭を最後にぽんぽんと撫でて送り出した。
「……じゃ、俺は酒買って帰る」
中也が葡萄酒の袋を握り直し、太宰に近づいて肩をどついた。
「おい、紛らわしいことすんなよ」
「いや〜中也が慌てる顔、何度見ても飽きないからさ」
太宰は肩をすくめて笑い、香織は慌てて中也と太宰の間に割って入った。
「二人共、喧嘩は駄目!!」
中也が舌打ちしながら背を向けると、香織は深く頭を下げてから太宰の袖を引いた。