第6章 時を超えた想い、私はあなたの何番目?
「随分と手慣れているじゃないか」
太宰が子供の手を引きながら何気なく呟くと、香織は笑いながら肩を竦めてみせた。
「小さい子の面倒をシスターに任されていたからね、放っておくと木に登ったりするから大変だったんだよ」
太宰は香織をちらりと見やって、ふっと口元を緩めた。
二人が子供と手を繋いだままショッピングモールの通路を歩いていると、不意に声が飛んだ。
「お、おい……手前等」
反射的に立ち止まった太宰と香織が振り返ると、そこには葡萄酒の紙袋を片手にした中也が立ち尽くしていた。
見るからに顔色が青い。唇すらわずかに引きつっている。
「‥‥手前等、デキてたのか……」
「は?」
太宰も一拍置いて、片眉を上げて首を傾けた。
「え?」
香織が小さく子供の手をぎゅっと握り直すと、中也は酒の袋をぶらりと下げたまま目を細めて睨んだ。
太宰の口元がぐっと緩み、肩が揺れる。
「ぷっ……はははは!」
腹を抱えて笑い出した太宰に、香織は顔を赤くしながら思わず肘で小突いた。
「ちょっと!笑ってないで否定してよ!!」
「いや〜だって、家族ごっこみたいで面白いじゃないか」
「何だ、違ぇのか?」
中也がずいっと歩み寄って太宰を睨みつける。
香織は両手をバッと上げ、子供の肩を守るように自分の前に引き寄せた。
「違うに決まってるでしょ!短期間で子供産めないし!!」
思わず声が裏返り、香織の耳まで赤くなった。
太宰は笑いすぎて目尻を指で拭いながら、中也に向き直った。
香織は慌てて手をぶんぶん振りながら、息を整えて中也に事情を説明した。
言い終わる頃には、肩で息をするほど力が入っていた。