第6章 時を超えた想い、私はあなたの何番目?
「国木田君、そんな仏頂面してれば子供は怖くて泣くさ」
国木田が唇を引き結んだ瞬間、香織が胸を叩いて立ち上がる。
「国木田さん!私に任せて下さい!!」
自信満々に拳を握り、トトトッと子供の前へ歩み寄る。
しゃがんでソファに座る男の子と目線を合わせると、柔らかく笑みを浮かべた。
「ねぇ、君。お名前を教えてくれる?」
香織がそっと手を伸ばし、男の子の小さな手に自分の指先を触れさせる。
子供はちょっとだけためらったが、小さな声でぽつりと答えた。
「……優」
「優君かぁ。いい名前だね」
香織はふわっと笑って、男の子の髪を一度だけ優しく撫でた。
「じゃあ優君、何処ら辺で逸れたのかな?」
優は涙で潤んだ瞳をこすりながら、ちょっと考えるように口を尖らせた。
「……お店がいっぱいあるところ」
敦が手を叩いて小さく声をあげる。
「ということはショッピングモールですかね?」
「如月、太宰。この小僧の両親を探せ」
国木田がピシッと指を突き出すと、太宰が首を傾けて唇を尖らせた。
「国木田君、何故私も−−−」
「了解でーす」
香織は太宰の腕を容赦なく掴み、太宰の袖をぐいっと引っぱる。
そして優にはにっこりと笑いかけた。
「私達が優君のパパとママを探すから安心してね」
優は小さな手をぎゅっと握りしめると、涙を止めて香織を見上げる。
「ありがとう、おねーちゃん」
後ろで国木田がぼそりと呟く。
「頼むから余計な騒動を起こすなよ、特に太宰……」
敦は優の隣にちょこんと座って、そっと笑いかけた。
「大丈夫、きっとすぐ見つかるよ」