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【第二章】ヨコハマ事変篇 〜ひとしずくの願い〜

第4章 青の時代 〜忘れられないあの日の思い出 𝓟𝓪𝓻𝓽3〜







「‥‥ん?ご主人?」

美鈴はゆっくりとまばたきをしながら、ぼんやりと上を見上げた。
視界に映るのは中也の少し呆れた顔と、帽子の影で揺れる前髪。

「起きたか?」

中也は頬杖をつき、空いた方の手で無造作に美鈴の髪の毛を摘んでくるくると指先で弄んでいる。

「えへへ、ご主人の膝枕だ〜〜」

美鈴は嬉しそうに小さく笑いながら、横に置いていた手で中也の膝に触れてすりすりと頬を押しつけた。

「男の膝枕なんて楽しいかよ、変な奴」

中也は小さく鼻で笑って、摘んでいた髪を離すと今度はそっと美鈴の額にかかる前髪を指で払ってやる。

「で、いい夢でも見れたのか?気持ちよさそうに寝てたぞ」

中也はふっと目を細めて、美鈴の顔を覗き込んだ。
美鈴は目を細めたまま、中也の膝に頭をこすりつけて小さく笑った。

「‥‥昔の夢を見てました。ご主人と会ってから今に至るまでの‥‥大雑把でしたが」

美鈴はぼんやりとした目で中也の顔を見上げた。
中也は頬杖をついたまま、小さく鼻を鳴らす。

「ふん、つまらねぇ夢だな」

「私にとっては一番大事な夢ですよ?」

美鈴はふわりと笑って、そっと自分の髪を指先で撫でた。
中也の太ももの上にある自分の頭があたたかくて、どこか恥ずかしくて。

「ご主人と出会わなかったら、私どうなってたんでしょうね」

「どうだか、たぶん……」

中也は小さく口を歪めて、美鈴の髪を無造作に指でつまんだ。

「……つまんねぇ奴のままだったんじゃねぇの」

「ひどっいですね、まぁそうかもしれないですけど……」

美鈴は目を細め、指先で中也の膝に触れる。

「でも、今はご主人の膝枕で寝落ちして……幸せだなって思いました」

「……バカ」

中也はそっぽを向きながらも、そっと美鈴の髪を撫でた。
美鈴はくすぐったそうに目を細め、小さく笑った。

「また膝枕してくれますか?」

「……気が向いたらな」

「やったぁ」

遠くで誰かの足音が近づく音がする。
それでも美鈴は目を閉じて、もう一度だけ、中也のぬくもりを感じながら小さく息を整えた。





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